情報アイランド

「情報を制する者は世界を制す」をモットーに様々な情報を提供することを目指すブログです。現在はプログラミング関連情報が多めですが、投資関連情報も取り扱っていきたいです。

Bitcoinは分散型なのか?


今日の問題提起
Q. Bitcoinは真に分散型の系なのか?


今日はAlbert Wenger氏の「Bitcoin: Clarifying the Foundational Innovation of the Blockchain(Bitcoin: ブロックチェーンによる技術革新の根本的なところを明確にする)」という記事について書きます。

まずは当該記事へのリンクを貼っておきましょう。

Bitcoin: Clarifying the Foundational Innovation of the Blockchain
http://continuations.com/post/105272022635/bitcoin-clarifying-the-foundational-innovation-of

Albert Wenger氏は当該記事でブロックチェーンは組織的には分散化されている(organizationally decentralized)が、論理的には集中化されている(logically centralized)と主張しています。そして、多くの人はこの点について区別ができていないと氏は言います。


さて、組織的分散型/集中型の系と論理的分散型/集中型の系の違いは何でしょうか。

組織的集中型の系は単一の組織によって管理されている系です。たとえば、PayPalやMicrosoft Excelがこれに当たります。PayPalはPayPal Holdings Inc.という単一の組織が運営していますし、Microsoft ExcelはMicrosoft Corporationという単一の組織が開発しています。

逆に、組織的分散型の系は単一の組織によっては管理されていない系です。たとえば、Bitcoinや電子メールがこれに当たります。Bitcoinには単一の管理者はおろか、管理者というもの自体が存在しません(強いて言えば、取引の検証を行うBitcoinネットワークの参加者全員が全体として管理者を形成しています)。Bitcoinネットワークの参加者は基本的に単身でBitcoinの一部又は全部を制御する権限を一切有しません(苟も単一の参加者がBitcoinの一部又は全部を制御することができたなら、それは攻撃と呼ばれます)。電子メールにも単一の管理者は存在しません。しかし、電子メールの場合、メールサーバ毎に管理者が存在します。メールサーバの管理者は自身が管理しているメールサーバの動作を制御する権限は有しますが、自身が管理していないメールサーバの動作を制御する権限は一切有しません。

また、論理的集中型の系は単一のデータベースを有する系です。実はBitcoinは論理的集中型の系です。何故なら、BitcoinのブロックチェーンというのはBitcoinネットワークの参加者全員が共有している(より正確に言えば、合意形成手続きにより参加者の合意が達成されている)単一のデータベースだからです。PayPalも論理的集中型の系です。

逆に、論理的分散型の系は複数のデータベースを有する系です。典型的には、参加者が独立したそれぞれのデータベースを有し、しかも、自身のデータベースを制御する権限を有します。たとえば、Microsoft Excelや電子メールがこれに当たります。Microsoft Excelの使用者はMicrosoft Excelを使って自由に幾つものExcelファイルを作成することができますし、作成したファイルを変更したり、削除したりすることも少なくとも原理上は自由です(ただ、仕事で作成したファイルなどは、たとえ自身が削除したいと思っても、削除することが許されなかったりするかもしれません。しかし、これはまた別の話です)。電子メールの場合、複数のメールサーバが存在し、それぞれは独立しています。また、電子メールを自身のアカウントから相手のアカウントに送信した場合、送信した電子メールが相手のアカウントに複製され、元の電子メールと複製された電子メールは独立したものになります。電子メールの使用者は自身が書いた電子メールや自身が受け取った電子メールを好きなように取り扱う権限を有します。

大域的なデータベースと局所的なデータベース

ちょっとした注釈。

論理的集中型の系におけるデータベースは大域的なデータベース(global database)と言えるかと思います。逆に、論理的分散型の系におけるデータベースは局所的なデータベース(local database)と言えるかと思います。

Bitcoinの真の凄さ

Bitcoinの凄さを語る際に、「Bitcoinは分散型だから凄い」という風に言ってしまうことはよくあるのではないでしょうか。

しかし、それでは全然説明になっていません。

何故なら、通貨系のような、参加者の間でただ1つの系の状態(通貨系の場合は誰がどれだけの通貨を保有しているか)を保持しなければならないような系は本質的に論理的集中型にならざるを得ないのですから(参加者が独立してそれぞれ自由な通貨系の状態を持つことができたら通貨系は成り立ちません)。

Bitcoinの真の凄さというのは(他にもBitcoinの凄い部分は沢山あるかもしれませんが)、互いに信用できない(untrustworthy)参加者による組織的分散型の系を基盤としているのにその上で論理的集中型の系を一応は実現できているということなのです。

そして、正に通貨系は論理的集中型である必要があり、しかも、出来れば組織的分散型であった方が望ましいかもしれない系だということです。

逆に言えば、Bitcoinの技術を応用できる、あるいは、応用することが望ましいかもしれないものというのは、

  • 論理的集中型である必要がある。
  • しかし、組織的分散型である必要があるか、あるいは、組織的分散型であった方が望ましい。

ものだということになります。

これに該当しないものに関しては別の技術を利用した方が良いでしょう。

さて、互いに信用できない場合は良いとして、互いに信用できる場合はどうなのかという疑問は当然出てきますね。課題として挙げておきましょう。


今日の問題提起
Q. 互いに信用できる(trustworthy)参加者による組織的分散型の系が必要な場合にもブロックチェーンを利用するべきか?


所感

Bitcoinが信じられているほど分散型でないという点については私も以前からTwitterや「勉強ノート」などで書いてきましたが、Bitcoinそのものには焦点を当てておらず、Bitcoin自体は分散型であるとしても、取引所などBitcoinの周縁にあるものはまだまだ集中型であるという論調で主張していました。あるいは、分散型の系であっても経済原理的な現象などにより、集中型の系に変貌してしまう可能性はあるという主張をしていました。

Albert Wenger氏の主張は私が主張してきたこととはまた異なり、ブロックチェーン自体に集中型の特性があるということです。当たり前と言えば当たり前なのですが、当たり前過ぎて逆に見落とされがちな点かもしれません。


今日の結論
Q. Bitcoinは真に分散型の系なのか?
A. Bitcoinは真に分散型の系ではない。少なくとも次の3つの点で真に分散型の系とは言えない。

  • Bitcoinの周縁にある系は分散型でないものも数多い。
  • Bitcoinは論理的分散型の系ではない。
  • Bitcoinは系の設計水準では組織的分散型の系であるが、だからと言って組織的分散型であり続ける保証はない(取引の検証を行うBitcoinネットワークの参加者が単一となればそれはもはや組織的集中型の系である)。

そもそも真に分散型の系であるか否かを考えることにはあまり意義がない。組織的分散型/集中型と論理的分散型/集中型を分けて考えよう。


pizyumi
プログラミング歴19年のベテランプログラマー。業務システム全般何でも作れます。現在はWeb系の技術を勉強中。
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