劣等感
※これは「名もなき老婆」さんからの寄稿記事です。このブログでは寄稿を募集しています。興味がある方はご連絡ください。
「頭の後ろでこ、こんなの嫌だな」
小学校以来、八十歳を過ぎた今でもそう思っている。
小学校の時から田舎では、散髪をするのは家庭で切れない剃刀でごしごし、痛い痛いと思いながら剃ってもらったものだ。
母が剃ると、あまり長い髪をしておけないので、おでこのところを丸出しにして剃ってしまう。
それも頭の格好で仕方がないのかもしれないけど、小学校も高学年にもなれば散髪屋へ行く。
きっと綺麗になっているだろうと、さっぱりしたはずなのに、不愉快になってしまう。
何か後ろでこは本当の田舎者というイメージで、後ろ髪がまっすぐ下がっている人をとてもうらやましく感じた。
兄妹を見ても何か私だけがこんなに大きな後ろでこ。
いつか母に聞いたことがある。
「どうして私だけこんなに後ろでこなの?」
母は、
「あんたは生まれてからずっと頭にできものができていて、少しも寝かせられなかった。いつもいづめの中で頭をつけられず、顔で支えて寝ていたから仕方がなかったのよ」
そう言えば、大きくなってからでも虫に刺されたり引っ掻いたりすると、すぐ膿んでじゅくじゅくになり、薬をつけたのを覚えている。
また、親に似るということもあり、私も父の頭の形とそっくり。
仕方がないけど、もっと中身が似ると良かったのに。
女学校では私のような後ろでこの人はほとんど見当たらなかった。
クラスの中で後ろでこの人は本当に田舎から通学している人が多かったようだ。
田舎育ちというのは、やはり家族の者が仕事が忙しくて、幼児期にあまり面倒を見てもらえなかったことも原因しているのかな。
女学校の三年ぐらいの時から後ろの方を二つ割りにしてお下げにしたらますますの劣等感(決まりなので仕方がない)。
頭の格好の良い人はお下げにして横から見ても後ろから見ても可愛らしい。
友達の中には「後ろでこの人はしっかり脳みそが詰まっているのでとても頭の良い人ばかりよ」なんて慰められたけど、少しもうれしくなかった。
自分の嫌だったことは子供もそうだろうなと思い、自分の子供には私の好きな頭の格好にしたつもりだけど・・・。
